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『死にたい』と打ち明けたれたら?

皆さんは、患者さん、ご家族やご友人から『死にたい』という思いを打ち明けられたことはありますか?

打ち明ける本人にとって、この思いの表出は容易なことではありません。
孤独感、絶望感、不安感を抱えながら、自分の気持ちや状況を理解してもらえないという恐れや、助けを求めることへの抵抗感など、様々な複雑な思いを持ちながら打ち明けたことでしょう。

部署にもよるとは思いますが病院で看護師として働いていても、この思いを打ち明けられた経験のある看護師さんは多くはないのではないでしょうか。またこの時の対応についても個々の判断で行うことが多く、適切な対応方法を検討した経験がある看護師は少ないかもしれません。
しかし、臨床の場ではいつそのような状況に遭遇するか分かりません。打ち明けられた後にどのように対応するか、医療者として正しい対応と誤った対応を学ぶ必要があります。

先日、秋川病院の植田宏樹院長による講演会「家族介護者の心とからだの健康〜ストレスをやわらげるヒント〜」に参加し、うつ病患者さんへの対応としてTALKの原則というものを学びました。講演会の内容と精神科看護師さんからのお話を受けて学んだことをこちらでも共有したいと思います。

『死にたい』と打ち明けられた時の対応:TALKの原則とは?

TALKとは、Tell、Ask、Listen、Keep safeの頭文字を取ったものです。
T :Tell(心配していることを言葉にして伝える)             ・・・step2
A :Ask(『死にたい』と思う気持ちに対してはっきりと尋ねる)      ・・・step1
L :Listen(『死にたい』ほど辛い相手の気持ちを聴く)          ・・・step3
K :Keep safe(安全を確保する)                   ・・・step4

Step1/Ask

『死にたい』と打ち明けられたときには、「死にたいの?」とはっきりと尋ねましょう。
大概の人は「そんな悲しいこと言わないで」、「死にたいなんて言わないで」、「そんなこと考えちゃだめ」と無意識に相手を否定するような発言をしがちです。
相手の思いを頭ごなしに否定するのではなく、相手の考えを尊重し、『死にたい』という気持ちに対して「どんな時に死にたいと思うの?」と素直に尋ね、相手に死についての意見を言ってもらいましょう。
ここで注意が必要なのが話を逸らしたり、気を紛らわせようとすることや、一方的に話すことは避けるべきです。

Step2/Tell

次に、「死なないでね」「死んでほしくない」とはっきりと自分の気持ちを素直に伝えましょう。相手の『死にたい』という思いを否定するのではなく、自分の気持ちとして、心配を言葉で表現します

Step3/Listen

そして『死にたい』ほど辛い相手の気持ちをじっくり聴いてください。この時、我々看護師は聴きながらも次の解決策を考えてしまいがちですが、この場面では、看護師が話すことで本人に圧力をかけてしまいます。
沈黙という非言語的コミュニケーションでは愛情や同意など様々な意味を持たせることができます。相手が黙っていたら、自分も黙り、ひたすら“聴く“ことに集中しましょう。沈黙を通じて相手が表現したいことを察知することもとても重要です。

Step4/Keep safe

病院ではこのような思いの表出があった場合、精神科領域のフォローがあります。しかし在宅の場合、精神科介入がすぐには行えません。できる限り一人にしないことや、身近にある危険物は隠しておくこと、関係機関への連絡・共有を徹底し、できる限り早く受診できるような環境を整えることが必要です。

全過程において“してはいけないこと”

安易な励まし、解決策を示す
『死にたい』ほど悩んでいる人に「頑張って」「生きていればなんとかなるよ」と声をかけてしまうと、本人を余計追い詰めることになってしまいます。

自分の価値観を押し付ける
「命を粗末にしないで」などの、自分の価値観を一方的に押し付けるような発言もやめましょう。

常識を述べる、否定する
「この年齢ならこういうことは」、「死にたいなんて言わないで」、「そんなこと考えちゃだめ」といった発言は無意識に相手を否定しています。

話を逸らす、一方的に話す
本人が自分の気持ちの辛さと向き合う時間にできるよう、受容的な態度を示し共に話しましょう。

このようなデリケートな問題に直面した際に、私たち医療者は、相手の気持ちに寄り添い、真摯に耳を傾けることが求められます。前述したように『死にたい』という思いを打ち明けることは大きな勇気が必要な行為です。その一歩を踏み出した相手に対して、私たちが適切に対応できるかどうかが、彼らの心の支えになるかもしれません。

心を開いてくれたその瞬間を大切にし、共に歩む姿勢を持つことが、まずは重要です。
私たち一人ひとりがこのことを意識し、実践して行くことが、より良い看護サポートに繋がると信じています。

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